苦痛を感じているうちは「没頭して」いない

苦痛を感じているうちは「没頭して」いない

「一生懸命に生きる」

これはよく聞く言葉です。

「一生懸命」というと、あたかも自分が苦手とすること、未経験のこと、嫌なことにあえて向き合って、ひたすら耐え忍びながら取り組むといったイメージが、どこかついて回ります。

でも、自分にとって嫌なことを、イヤイヤに、仕方なしにやっていたのでは、どれだけ辛抱強くやり終えたとしても、「やっと終えることができた…」とか、「結構、しんどかった」「二度とごめんだ」などという思いだけが残るのではないでしょうか。

これは、いわば「達成感」というよりは、「やっと苦痛から逃れられた」という「疲労感」ですよね。

五感を持つ私たち人間は、日々の暮らしの中で苦痛を感じることは、決して少なくないでしょう。いやむしろ、苦痛を感じることのほうが多いかもしれません。
なのに、どんな偉人や大物も、口を揃えて、「一生懸命に生きる」ことの重要性を説きます。
これは、「苦痛を味わえ」と言っているのでしょうか。「苦痛にひたすら耐える」ことを理想としているのでしょうか。もしそうだとすれば、そうまでして過酷な生き方をしなければ、人間というものは価値がないのでしょうか。

これは、「一生懸命」の解釈の違いに気づかなければいけない、ということだろうと思います。

「一生懸命」ではなく、「没頭する」

これまで生きてきた中で、時間が過ぎるのを忘れてつい何かに没頭した、という経験が、誰にもあるでしょう。
何かに没頭した後は、言い知れぬ爽快感に満たされることは、言うまでもありませんよね。

禅の言葉に、「ずい」というものがあります。
これは、「清らかな心境」「若々しい心」「美しい気持ち」といった意味を持つそうです。
禅では、何事であっても没頭することで、この「瑞」という心境を得られると考えられているそうなのです。

それは、日常の育児、炊事洗濯など家事全般、また仕事上の業務など、それらすべてが該当するわけですね。なにも禅の世界の修行とされる座禅や掃除、草取りといったものに限られるものではないはずです。
むしろ、あらかじめ用意された場で行う禅の修行よりも、より実際に則した臨機応変な対応を求められる日常のほうがよほど修行になると思っています。

いずれにせよ、肝心なのは「没頭する」ということです。

「何事も一生懸命にやれば楽しくなる」といった格言をよく聞きますよね。
ここに、言葉による勘違いが潜んでいるような気がしてなりません。

「一生懸命」というのは、頑張っているその人をはたから見た姿のことであって、本人にしてみれば「一生懸命やろう」と自分に言い聞かせるほどに苦しくなるばかりなので、ここで思いきって「没頭」しちゃえばいいのです。

日常、あらゆる場面で、「これは修行か」とさえ感じるような、辛くて、苦痛で、つまらないと感じるようなことはたくさんありますが、その感情をいったん脇に置いて、それをとことんこなしてやろうと、没頭してみることです。
どんなに面倒だとか嫌だと感じることであっても、いざ真剣に始めてみると、自分の無知を思い知らされることや、もっと工夫すべき点などが山ほど出てくるものです。
「没頭する」というのは、それら一つ一つを解決しながら自分のものにしていく楽しさを味わうことだと思います。

その結果、ほんの少しでも満足のいくようにやり遂げることができたなら、誰しもが清らかで爽快に気持ちになるものです。

同じ事柄にあたるにしても、「どう取り組むか」で、それを苦痛と感じるか、やりがいと感じるかが明確に分かれてきます。

取り組む事柄の大小は関係ありません。ただそれに没頭するだけで、心が清らかな爽快感に満たされるから不思議です。
爽快感は、そのまま充実感につながります。充実感は、生きる意欲であり、明日への活力となります。

明日、何かにとことん「没頭」してみませんか。
そこには、「一生懸命やろう」などと考える「頭」は「没」しているはずです。

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