競争社会に想うこと

競争社会に想うこと

今回は、ちょっと記事の角度を変えてみます。

能のうたいに「鉢の木」という物語があります。
そもそも「能なんて知らない」という方もおられるはずですが、この話に縁のある栃木県の〝佐野市の昔話〟から一部引用してみますね。

ある旅僧が山本の里(今の葛生町)で大雪に見舞われ、とある貧しい農家に一夜の宿を請うた。貧しい暮らしのこの家の夫婦はなけなしの粟飯を出してもてなし、また秘蔵の鉢の木(梅、松、桜)をも焚いて暖をとらせた。家の中の古いが手入れされた武具甲冑を見て、僧は主人を由緒ある者と察し、その素性をたずねた。宿の主人は隠しきれず、佐野源左衛門常世の〝なれのはて〟と名のり、一族の者に横領されて零落はしたが、もし鎌倉に大事が起こったら、一番にはせ参じて奉公する覚悟だと語った。
旅僧は引き止める夫婦になごりを惜しみながら立ち去った。
やがて春になると、鎌倉に一大事ありと各地の武士に緊急動員令が発せられた。
彼の旅僧(実は鎌倉幕府執権の最明寺入道北条時頼)は、その中で常世のことばの真偽を確かめたところ、果たして常世はやせ馬に鞭打ってはせ参じたことを確認した。
これに感じ入った時頼は常世の忠節を賞して本領をもとにもどし、さらに貴重な鉢の木のもてなしに対して、梅田、松井田、桜井の三つの領地を与え、常世は面目をほどこして、山本の里に帰ったという。

どうしてこのような物語が今でも人の心を打つのでしょうか。

道義から外れることの不安

昔、日本をよく研究したあるヨーロッパ人が、極東の日本はアジアにあってヨーロッパに最も近い国だと称したそうです。イギリスにしてもフランスにしても、「自国の騎士道と日本の武士道は超越的な精神に支えられていて、友愛や勇気をもって原点に忠実に生きている」ということのようです。
しかしながら、これは昔の話で、もし今の日本を眺めたとしたら、残念ながらとても混乱していて、自国に対する信頼と、自信を失っている印象を受けるのかもしれませんね。

先に紹介した物語が、今でも人の心を打つのは、「大義をもって生きる」ことのすがすがしさを感じるからではないでしょうか。

私たちは、きっと心のどこかで、このままの日本が、自分たちの子孫に受け継がれて良いはずがないと思っているのではないでしょうか。
それはおそらく、人が行うべき正しい道(道義)から外れていると感じることが、だんだん多くなってきて、何かしら心の安らぎを感じられないからではないか?と言われると、少なくとも私などはギクッとするものです。
私たちには本来、安心できる仲間の中で活動し、過ごしたいという願望が生物本能として備わっているといいます。それが競争社会の中では満たしきれず、収穫のないまま不安が募りストレスが蓄積されていきます。仕事であれプライベートであれ、必要以上の情報がはん濫して、その影響も加わって人間を信用できなくなった人は、せめて血の通った家族に安らぎを求めますよね。
昨今、〝やはり家族が一番〟といって一家で頑張っている姿が描かれると私たちの涙をさそうのは、そこに安心の原点が存在するからなのでしょうね。

しかし、ささいなことでこじれてしまい、その家族さえ信用できなくなったら、身近によほどの人がいないかぎり人間ぎらいになってしまうか、はたまた開き直って金の亡者などになってしまうのかもしれませんね。

こうしたことを思うにつけ、競走社会は人間を強くし、怠惰をなくしていけることから、完全に否定すべきではないと思いますが、この先、その仕組みを大きく改善していく必要があると思えませんか?
経営者なら、自分が束ねる組織にはどんな大義があるのか、そして社員が安心して働けるための仕組みに改善の余地はないかどうか、あらためて考え直してみることも賢明なことですよね。

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ムズカシイことなんていらない

人は誰でも、何か事あるたびに、「自分の人生はなぜ思うようにならないのだろう」と考え、そして悩みます。
それは、能力や努力不足に問題があるのではなく、その人の考え方(思い込み)に起因するところが大きいと言えます。
本書には、私たちがなかなか気づかなかった、迷いからの脱出口を発見できるよう、できるだけヒントを挿入していったつもりです。

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