人に頼るな、自分を頼れ

「あの人だけが頼りだ」
「これについては、あの人を頼るほかない」
自分以外の相手に何かを頼り、全面的に依存しては、相手が期待に応えられない場合に不平不満を述べ連ねるという人に、心当たりはありませんか。
自分というものがいったいどこにあるのか分からず、アイデンティティも感じられず、結果的に相手に振り回されているだけで、はたから見ると暗闇の中を迷走しているようにさえ映ることでしょう。
ブッダの死期が近づいたとき、それを知った弟子たちは、これまでは師匠であるブッダがそばにいてくれたからこそ迷うことなく修行に打ちこめたのに、それができなくなる不安から混乱したそうです。
ブッダという存在がなくなったら、何を心の支えとして生きていけばいいのやら、まるで分からなかったのでしょう。
弟子の一人は、ブッダに、「お師匠様が亡くなられたら、何を頼りにして生きていけばいいのか」と尋ねたそうです。
するとブッダは、「仏法と、そして自分自身を頼りにして生きていきなさい。そうすれば、これまで通り、心穏やかに生きていける」と答えたそうです。
この「自分自身を頼りにして生きていく」というブッダの言葉から、「自灯明」という禅語が生まれたそうです。これには「他人を頼るな」という教訓が含まれているのだそうです。
自分を頼ると、自分らしさが出る
もちろん、他人のアドバイスや意見に耳を傾け、参考にすることは大いに結構なことでしょう。
しかし、あまりにもそれらに傾倒すると、どうしても他から入ってくる情報に振り回される生き方しかできなくなります。
いくつになっても生き方が定まらず、自分らしさが出てきません。
そのため、あくまで自分の考えを主体として、物事を自分で決めて行動するというのは、とても大切なことになります。
たとえそれによって失敗するようなことがあっても、自らの決断であれば納得できますが、他人の価値観に頼って判断し、結果的に失敗するようなことがあると、後悔しか残らないことになります。
他人を頼って、良いことばかり起こればそれに越したことはありませんが、それによって良からぬ事態がもたらされた場合、今度は言い知れぬ不安や不満を抱えて生きていかなければならなくなります。
こうしたことが積み重なっていくと、どこかで自分自身の生き方を見失ってしまいかねません。
成功するにせよ、失敗するにせよ、自分で考え、自分の責任で前に進むことで、自分自身に納得でき、自分の人生に満足できるようになるはずです。
他人を頼らず自分を頼るとなれば、ときとして背水の陣で物事に臨まなければならないこともあるでしょう。
しかし、それこそが自分を真に成長させてくれるものです。
「自分を頼る」といっても、間違えてはいけないのは、決して傲慢になるということではないですし、他人の話に聞く耳を持たないということでもありません。むしろ、他者を活かし、他者を思いやる生き方(過去記事参照)ができてこそ、自分を信じる生き方ができていくものと確信しています。
自分の人生を他人に賭けるようなマネは、誰もしたくないですよね。
「自分らしさ」という言葉はよく聞きますが、まさに自分を頼りに生きている人こそが自分らしさを発揮できているのでしょう。