「認知的不協和の理論」から自分を知る

「認知的不協和の理論」から自分を知る

ためになる話を聞いたり、読んだりしても、かたくなにそれらを理解、実行しようとしない人がいます。(私にもその傾向はありますが……)
それまで習慣になかったことを自分の中に取り入れるというのは、少々大変なことであることは事実なのですが。

1957年に、米国スタンフォード大学のFestinger, L教授が発表した「認知的不協和の理論」という学説は、今もなお社会心理学などの分野で参考にされています。
氏によれば、人は、知識、意見、信念などの認知要素の中の二つが心理学的に不一致、矛盾している状態のとき、緊張(ストレス)を経験し、その緊張を低減させるために、自己の考えを適応させようと反応するといいます。
つまり、自分が考えていたことと結果が違ったときや、自分の行動が周囲の価値基準からは認められないとき、「認知的不協和」という心理状態が発生し、この状態になると、人は居心地が悪くなり、状況から逃避するか、なんとか自分を誉めたり、自らを安心(納得)させるための理屈をこじつけたりするというのです。

自分がやっていることや自分の状態を正当化したり、より強固なものにする理屈を編み出したりして、精神的に安住しようとするわけです。

これは誰でも身に覚えのあることかもしれませんね。

最近、よく「フリーズする」という言葉が使われます。自分にとって都合の悪いことを言われたりすると「固まる」という現象ですね。もともとはコンピュータ用語ですが、この「フリーズする」というのも、「認知的不協和」から脱したい自分が、自分を正当化するための理屈を編み出そうとするために、一時的に動作を止める現象だと言えるのではないでしょうか。
これに不自然さを覚える人もいますよね。

都合の悪いものを排除する自分か、素直な自分か

これは意識的にだけでなく、自分と相容れない情報をかたくなに排除したり、自分の都合の良いように解釈したりして、他人のみならず、自らも騙すことを無意識的にするようにもなります。
たとえば、ある社会的行為に反対している人は、その反対関連の本や、新聞を読みあさり、集会にも積極的に参加するようになり、それとは相対する情報のことを「危険だ」「必要ない」という解釈に導こうとします。
逆に、これに賛成する人には、それは安全だと勧めるよう努めます。

これらの行為が、政治・宗教・科学・思想教育などの分野でエスカレートしていくと、経過の中で不幸な状態を生み出し、取り返しのつかない社会現象に至るということは、昨今メディアを賑わせている事案を見ても、納得できることでしょう。

たしかに、自分というものを維持・向上させるためには、この認知的不協和に対する適応反応は避けては通れないものですね。しかし、それが思わぬ方向に自分を誘導してしまうことがあるのだということも、知っておいて損はありませんよね。

自分がつねに描いている「理想の自分」、すなわち社会の中で望まれる強くて素直な自分を維持していくことの大切さを痛感させられるものですが、同時にそれは大変なことでもありますよね。
しかし、こうした事実を日々思い起こしながら、自分なりの羅針盤を見失わないように、素直に行動していけるかどうかが、自分の人生の結果に大きく影響するのだということを、忘れないでいたいものです。

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